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レポートには何を書くのか

学生実験のレポートは,基本的には自然科学(なかでも実験科学)の論文と同じスタイルをとります.これは,このスタイルが実験を行ない,その結果わかったことを他人に報告するのに最も適したものだからです.

といっても,実際には物理学,化学,地学,生物学はそれぞれに長い歴史を持ち,独自の学問スタイルを持っています.もちろん,医学,工学,農学,薬学などの応用科学の分野も,基礎科学以上に長い歴史を持ちそれぞれの作法があります.したがって課題ごとにレポートの書き方は少しずつ変わってきますので,その点はそれぞれの課題における説明に注意してレポートを作成してください.

レポートの章立て

実験のレポート(や実験科学の論文)は以下の章からなります.

目的
実験の原理
実験の方法
結果
考察

目的

この章は,何を知るためにその実験をするのかを記述します.

これが論文であれば,あるテーマについてどのような先行研究があり何がどこまで分かっているか,何がわかっていないのか,それに対して自分はどのような新しい仮説を提示するのか,それを検証するためにどのような実験を行うのか,などを記載することになります.

学生実験では,実験によって検証しようとする“仮説”は,実際には既に十分な検証が行われている科学的事実なのですが,これをあらためて検証する実験を行うことで,実験技法やデータ処理法を学び,仮説 - 実験 - 評価という実験科学の筋道を学ぶのが目的となります.教科書の記述と実際に行なった実験をもとに,「何を検証しようとしているのか」,「何を学ぶための実験なのか」を簡潔に記述すればよいでしょう.

実験の原理

実験は何らかの自然科学の原理・理論に基づいて行なわれます.実験を行なう上でその前提となっている自然現象についての原理・理論,測定法や装置の作動原理などをまとめるのがこの章です.教科書を参考にして,その実験を行なう上で重要な,中心的な原理について記載します.式を書く場合には通し番号を振ります.

実験の方法

課題によっては,単に「実験」としたり,「材料と方法」としたりすることもありますが,いずれにしろ,具体的な実験の手順とその条件について記述する章です.一般的には,この章の最大のポイントは,“他人が読んで後から同じ実験を再現できること”です.重要なことは,“実際にどういう実験を行ったか”であり,そのために実験ノートが決定的な役割を果たします.

実験方法は教科書に詳しく記述してありますが,これはレポートの「実験の方法」とは違います.教科書では,初めて実験を行う者のために,装置や器具の取り扱い上の注意まで詳細に記述してあるわけですが,そういった部分はレポートには不要です.また,実際には教科書の記述とは違った操作をした,ということもあるわけです.したがって,教科書の記述を丸ごと書き写してしまっては手抜きだと判断されますし,場合によっては嘘を書くことになってしまいます.

レポートでは,実験ノートの記録に基づいて,実際に行った実験操作を簡潔にまとめるとともに,教科書には記載されていないが実験結果に影響するような実験条件について記載します.

結果

この章では,実験結果を客観的に報告します.実験終了時に得られた数値やチャート,写真,スケッチそのものが“結果”だと思ってしまう人がいますが,そうではありません.それらを客観的な文章として記述すること - どういう操作によってどんなことが起きたのか,何を測定したらどんな値が得られたのか,というように,実験操作との関連をはっきりさせて得られた結果を記述することが,この章の役割です.ですから,ここでも実験ノートの記載が重要になってきます.実験中に観察できたことをこまめにメモしておくとよい記述ができるでしょう.

得られる結果が数値データであれば,表やグラフを用いて結果をわかりやすくまとめます.数値の意味や単位を明記することも重要です.生の測定データからデータ処理を行なう際には有効数字に気をつける必要があります.グラフの書き方については別にまとめましたので参照してください.→グラフの書き方

図表には通し番号を振り,タイトルをつけます.図には,グラフのほかに装置の図や実験方法の流れ図,さらにクロマトグラフのチャート,写真,スケッチなどが含まれます.これらすべてに通し番号を振り(図1,図2,…),本文中ではこの図番号で参照します.表は図とは別扱いで通し番号を振ります(表1,表2,…).

数値データではない,現象の記述や観察の報告の場合にも,行なった操作との対応関係が明確になるように,客観的にわかりやすく文章にします.

考察

この章に何を書くかで悩む人が多いと思います.

科学論文におけるこの章の役割は,実験の結果得られたデータを適切に解釈し,そこから導かれる結論が,初めに提示した仮説を裏付けているか,実験計画は妥当であったかを検証し,掲げた実験の目的を達成しているかどうかを評価することです.

学生実験でも,このような仮説 - 実験 - 評価という実験科学の方法論を体験することが目的ですから,

  1. 実験データの解釈,意味付けを行う
  2. そこから論理的に導かれる結論はどのようなものかを論じる
  3. その結論は,初めに掲げた実験の目的を達成しているかどうかを評価する
という過程を踏んでいくことになります.

実験の精度と誤差について検討する

データが数値として得られる実験では,データを分析して,実験の精度や誤差について検討することが考察の大きな要素となります.

実験で理論通りの値が得られることはまずありません.装置,実験方法等に由来する誤差が必ず生じるからです.理論値そのものに誤差が含まれることも当然あります.誤差の範囲によって,そこから導くことのできる結論の範囲が変わってきます.一般には精度の良いデータであるほど,言及できる射程は広がり強い証明ができることになります.学生実験の場合には,これとは逆に,証明すべき“仮説”の範囲がはっきりしていますから,それに見合った精度のデータが得られたかどうか,というかたちでデータの誤差について考えることになります.

理論値と異なる結果が出たからといって,「実験は失敗した」と書いてしまったのでは,そもそも実験について回る精度や誤差のことを理解していないと言ってしまっているようなものです.どこの操作でどの程度の誤差が生じうるのか,測定機器の精度はどうなのか,といったことを吟味し,得られた値がどの程度信頼できるのかを明らかにする必要があります.その信頼性を考慮した上で,得られたデータは“仮説”と矛盾しないのか,それとも“仮説”とは相容れないのかを検討しなくてはいけません.後者であった場合にはじめて,実験のどこかに本質的な間違いがあったということになります.また,“仮説”と矛盾しないまでも,実験方法から予想される信頼性に達していないということもあるでしょう.この場合も実験のどこかに原因が求められるはずです.それを解明し,さらに,その信頼性を上げるような考察ができれば,非常に良いレポートとなるでしょう.

得られる実験結果が数値データではない場合でも,実験結果の良否について考察することは重要です.ここでも,単にうまくいった,うまくいかなかったというだけではなく,どの部分にどの程度の問題があるのかを論じ,その原因と改善方法について考えることになります.

行なった実験での検証の限界を検討する

提示した仮説を検証するためにどのような実験を行えばいいのか(実験計画)は一般の論文では重要な考察の対象なのですが,学生実験では,この部分については十分に考えて作り上げられており,その妥当性を云々する余地はほとんどありません.

しかし,限られた時間内で行わなければならないために,実際の実験では,テーマとして取り上げた自然法則を部分的に裏付けるに留まり,必ずしも十分な“検証”にはならないこともあります.このような実験では,行なった実験ではどこまでが明らかになったのか,それ以上の検証を行なうためにはどのようなことを調べればよいのか(どんな実験をすればよいか,あるいはどういう精度で実験すればいいのか)について検討することは非常に良い考察の材料です.

作業仮説の妥当性について考察するのはむずかしい

先に述べたように,学生実験では,検証しようとする“仮説”は,実際には十分な検証が済んでいるわけですから,その妥当性を考察する余地はほとんどありません(考察の書きにくさの一因かもしれません).それでも,予想通りのはっきりした結果が得られた場合には,「○○という結果から◇◇であることが明らかになった」と書いておくことは,実験の目的と結果の関係をはっきりと理解していることをアピールする意味はあります(逆に言うと,その程度の意味しかありません).

教科書の設問を解く

ほとんどの課題では,「問題」や「課題」として,解くべき設問が挙げられています.これらのなかには,「結果」の章で実験結果を要領よくまとめるためのものもありますが,多くは「考察」の課題として扱われていると思います.最低限,これらの設問を解くことが求められていますが,設問は「この実験をやったのだから,こういうことについて考えてほしい」という意味で出されていますから,実験の目的との関係を考えながら設問を解くと,ただ答えを出す以上のことが考えられるはずです.

「事実」と「推論」は切り分け,「引用」は明記する

さまざまなレポートの考察を読んでいて気になるのは,客観的に明らかな事実と推論が入り交じってしまっていることです.客観的に明らかな事実と,それらをもとに行う推論でははっきりと書き方を変えてそれぞれを区別する必要があります.

また,行なった実験では検証できないようなことを事実であるかのように書いてしまっていることもよくあります.それらは,ほかの参考書や教科書の記述から引用したものであることも多いのですが,そうであるなら引用であることを明記し,元の文献が何であるか記載しなければなりません.引用元を示さない書き写しは「盗用」になってしまいます.

最後に一応,コピペや丸写しについて

あらためて書くまでもありませんが,コピペや丸写しのレポートはやめておきましょう.何もいいことはありません.バレないし,と思っているかもしれませんが,まちがいなくバレています.何も言われなかったとしても,それはバレなかったからではなく,勉強する気のないやつは放っておいてやる気のあるやつの面倒をちゃんとみてやろうと思われているにすぎません.

友人と相談するな,過去レポを見るな,といっているのではありません.様々な資料を見たり,ディスカッションしたりすることは重要です.しかし,少なくとも書き上げて提出するものは自分の頭と自分の手で作り上げたものにしたいと思いませんか?

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